後見をお考えの方へ
安心した老後を送るための老い支度
~最後まで自分らしく尊厳を持って生きていくために「老い支度(準備)」を始めませんか?~
- 老い支度の必要性
- 老い支度の制度
- 任意後見制度とは
- 法定後見制度とは
- 遺言
- 各制度のメリット・デメリット
1 老い支度の必要性
年をとることは避けられませんが、最後まで自分らしく胸をはって生きることは可能です。自分がどのような老後を送りたいかをまず決め、そしてそのために今できることを考えませんか。
以前は、子供がいれば安心だと思われてきましたが、今は、子どもがいても老後を子どもに頼りたくない人、自分が経験した親の介護の苦労を自分の子どもにはさせたくない人、介護によって介護してくれる子供との関係が壊れるのではないか、もしくは、介護をめぐって子供同士が争うような事態を避けたいという人も増えています。
つまり、老い支度は、自分の老後を安心したものにし、加えて、自分の老後や財産をめぐって子供達が争うような不幸な事態を引き起こさないためでもあるのです。
2 老い支度の制度
では、老い支度にはどのような制度があるのでしょうか?
まず、判断能力が低下する前のお元気なうちにご自身が選ばれた人に、判断能力が低下した時に財産の管理や様々な福祉サービスの手配などをしてもらう任意後見の制度があります。
判断能力がなくなってしまうとご自身では後見人を選ぶことができなくなりますが、お元気なうちに信頼できる人(任意後見人)を選んでおけば、判断能力がなくなった時に、その任意後見人が家庭裁判所に申立をし、以後、その方があなたの後見人として様々な事を代わってやってくれることになるという制度です。
また、判断能力が低下し、あるいは判断能力がなくなってしまった場合は、法定後見の制度があります。
これは、家庭裁判所にお身内の方などが申立をし、家庭裁判所が選んだ方があなたの後見人になって、任意後見と同じく財産管理などを代わって行うというものです。
この制度の最大の特徴は、取消権です。巷を賑わすリフォーム詐欺や悪徳商法は判断能力が低下したお年寄りを狙います。仮にこれらの契約を騙されて結んだとしても後見人が取り消してなかったことにすることができ、財産を守ることができます。
さらに、今まで苦労して築いてこられた財産を配偶者や子供、お世話になった方などに自分の死後贈りたいという場合、遺言という制度があります。財産をめぐっての相続人間の不要な争いを避け、それぞれに贈りたいものを贈ることであなたの気持ちを表すことができます。
ここからはそれぞれの制度について詳しくご説明します。
3 任意後見制度とは
「任意後見制度」は、お元気なうちに判断能力が低下した時の財産の管理や医療や介護に関する契約や支払を代わって行ったり、住まいに関する契約などを信頼できる人(任意後見人)に頼んでおく制度です。
Q1 誰が任意後見人になれるの? A1 あなたが信頼する方なら誰でもなれます(但し、破産した者など欠格事由にあたらないことが必要です)。統計的には、子供や親戚、友人・知人が7割を占めています。残りの3割は司法書士や弁護士などの専門家ですが、専門家が後見人になる割合は今後増えていくのではないかと思われます。少子化の影響もありますが、専門家に任せる安心感もあると思われます。 |
Q2 手続の流れはどのようになっているの? A2 面談でご希望を伺います。希望される老後の過ごし方など十分にお話しを伺います。 ↓ 任意後見契約書の案を作成します。 ↓ 公証役場で公正証書にします。※任意後見契約は大切な契約ですので、公正証書で結ぶことが義務付けられています。 ↓ 法務局に任意後見登記がされます。※戸籍には記載されません。 ↓ 判断能力が低下 ↓ ご本人もしくは後見人が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。 ↓ 選任されるとここから初めて任意後見制度がスタートです! 家庭裁判所から選任された任意後見監督人は、後見人がきちんと財産管理等を行っているあなた(被後見人)が望む生活を実現できているかを監督してくれるので安心です。 |
Q3 費用はどの位かかるの? A3 任意後見の費用は3つに分かれます。一つ目は、任意後見契約を公正証書で結ぶ時、二つ目は任意後見契約を結んだ後、後見監督人が選任されるまでの間、そして三つ目は後見監督人が選任され任意後見がスタートした後の費用です。 |
費用の目安
Ⅰ 任意後見契約を公正証書で結ぶ時 | 任意後見契約書作成 +公証役場手続 |
50,000円 別途公証役場の手数料が約2万円程かかります(具体的には、登記嘱託の手数料1,400円 、公正証書作成手数料11,000円、法務局への印紙代4,000円)。 |
Ⅱ 任意後見契約を結んだ後、後見監督人が選任されるまでの間 | ・見守り契約のみ※ ・見守り契約+財産管理契約などを結んだ場合 ・家庭裁判所への後見監督人選任申立費用 |
月額10,000円 月額10,000円+委任事項によって変動します。 家庭裁判所の費用(登記印紙、郵券等 約10,000円、鑑定が必要な場合は別途5万から10万円必要になります) |
Ⅲ 任意後見がスタートした後 | 1年に一度、家庭裁判所に報酬付与の申立を行い、家庭裁判所が決めた金額になります。 |
※見守り契約とは、少なくとも1ヶ月に一度はお会いして、状況を確認し、必要に応じて主治医に連絡を取ることであなたの判断能力の低下を見守る契約です。
これによって、適切な時期に後見をスタートすることができます。緊急時に本人のために代わって入院、医療契約などの手続をすることも可能です。
さらに、次のような契約を別途結ぶことで、任意後見の効力が発生するまでの間のあなたの権利を守ることができます。
判断能力があるけれども、体が不自由になったり寝たきりになったりして財産管理ができないような場合は、司法書士などの専門家とこれらの契約を結ぶことで備えることができます。
例 ・不動産の処分(売却や担保にする場合)や管理(賃貸しているような場合)が必要な場合
・介護・福祉サービスの利用の手続や要介護認定の申請を行うような場合
・亡くなられた場合の葬儀、残された家財道具などの処分、未払いの医療費の支払いなどの死後
の事務
Q4 任意契約は途中で解約することはできるの? A4 任意後見監督人が選任される前と後で違います。 任意後見監督人選任前 公証人の認証を受けた書面でいつでも解除できます。 解除した方から解除された方へ通知する必要があります。 任意後見監督人選任後 選任後は、正当な理由があった上に家庭裁判所の許可がなければ解除できません。 ただし、家庭裁判所は、本人や親族、任意後見監督人の請求によって、不適切な 任意後見人を解任することができます。 |
4 法定後見制度とは
すでに判断能力が低下した人を援助するための制度が「法定後見制度」です。身体的な障害のみがある場合は、この制度の対象とはなりません。
制度の最大の特徴は、任意後見制度と違って、法定後見には取消権があるということです。
つまり、リフォーム詐欺や悪徳商法に不幸にしてだまされてしまった場合でも後見人がついていれば、取り消して契約がなかったことにすることができます。
具体的な手続は、本人、配偶者、四親等内の親族や市区町村長が家庭裁判所に申立てて開始します。家庭裁判所は、後見人等を選任し、法務局に後見の登記がされます。
戸籍への記載はなされません。
後見人が就任すると、後見人は大きく分けて二つのことを行います。財産管理と身上監護です。身の回りのお世話(身の回りのお世話をして下さるヘルパーの方との契約は身上監護に含まれます)や養子縁組などの一身専属行為はできません。
財産管理
預貯金、年金、不動産を管理し、家賃や公共料金、介護費用などの支払いを行います。年金の支払が停止している場合は、これを復活させ、健康保険や必要であれば確定申告の手続なども行います。
身上監護
身上監護とは、介護や医療、生活面の手配です。
在宅の場合、ヘルパーさんと協力して、生活状況を確認し、医療行為などが必要かなどの確認をします。老人ホームなどへの入居が必要な場合は、入居契約をホームと結びます。
5 遺言
相続財産を巡る骨肉の争いは非常に悲しいものです。仲の良かった兄弟姉妹、親子が遺産を巡って争うような事態は避けたいものです。また、遺言は判断能力がなくなってはもうできません。お元気な間に作成しておく必要があります。
例えば、会社を長男に継がせ、同居している次男には自宅を継がせたい場合、遺言をしていないと最悪の場合、会社の株を2人が分け合うことになり、会社の重要事項の決定ができなくなる怖れがあります。また、自宅は長男と次男の共有になり売却なども難しくなる怖れがあります。
このような子供がいらっしゃるケース以上に問題なのは、子供がいらっしゃらないケースです。
この場合、相続人は配偶者とあなたの両親、両親がなくなっている場合は、あなたの兄弟姉妹(兄弟姉妹があなたより先に亡くなられている場合は甥姪になります)が相続人となってきます。残された配偶者とあなたのご兄弟などとの間に遺産分割協議がまとまらないと、ご自宅なども配偶者とご兄弟などの共有になり、配偶者の単独の名義にするためには買い取らなくてはならなくなったり、分割を要求されてせっかくのご自宅を売却しなくてはならなくなるケースも多々あります。
このような場合、ご兄弟には遺留分という相続財産を受け取る権利のようなものがありませんので、遺言で「すべての財産を配偶者に相続させる」としておけば、残される配偶者の方があなたのすべての遺産を取得することができた訳です。
つまり、遺言は、しておいた方がいい!ではなく、しておかなければならない!と言えるケースも多々あるということになります。
遺言の方法
遺言には、大きく分けるとすべて手書きの自筆証書遺言と公証役場で作成する公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は、誰にも知られることなく費用もかからないため、手軽で例えば毎年年初に書くことも可能です。ただ、手軽さの反面、相続が発生した場合家庭裁判所での検認の手続が必要になり、結局費用がかかりますし、遺言無効確認の訴えなど遺言の内容に不満を持つ相続人が訴訟を起こすなど紛争の火種が残ってしまう怖れがあり、お勧めできません。
公正証書遺言は、公証役場で公証人と2人の証人の前で遺言状を作成します。そのため、公証人の費用が必要になりますが、仮に遺言をなくしても公証役場に原本がありますので謄本を受け取ることができますし、改竄される怖れもありません。
また、付言といって、遺言の最後に記す文章によって、何故このような遺言の内容にしたかの理由であるとか、相続人に対する希望や感謝の気持ちを言葉で表すことができます。
付言には法的な効果はありませんが、遺言の趣旨を理解して貰い、結果として遺言の内容をスムーズに実行することができるようになる効果もあります。
遺言の費用(※不動産がある場合)
その他、公証人の手数料と交通費などの実費が必要となります。
公正証書遺言案作成のみの場合 | 70,000円 |
公正証書遺言案作成+公証役場手続も含む場合 | 100,000円+公証人費用 |
6 各制度のメリット・デメリット
任意後見、法定後見、遺言には下記のような代表的なメリット・デメリットがありますのでご確認下さい。
任意後見制度 | 法定後見制度 | 公正証書遺言 | |
メリット | ・まだお元気な間に契約することで、将来ご自身が望まれた老後の生活を実現できる ・家裁で任意後見監督人が選任されるので、任意後見人に対するチェック機能が働く |
・取消権があるので、悪徳商法などの被害にあっても取り消してなかったことにできる | ・改竄される怖れがない ・なくしても原本が公証役場にあるので発行して貰える |
デメリット | ・取消権がないため、被害にあっても後見制度によって取り消すことができない | ・判断能力が低下してからの申立となるため、自分の意思が反映されない可能性がある ・後見の場合、選挙権、被選挙権がなくなる |
・公証人の費用などがかかる |
最後まで自分らしく尊厳を持って生きていくための、「老い支度」についてご説明させ
ていただきました。 皆様方お一人お一人のご希望に添って様々な制度を組み合わせることで、ぴったりの「老い支度」のお手伝いをさせて頂きます。ご相談下さい。